刑事上の責任

交通事故を起こした場合、刑事上の責任が問われます。
つまり、裁判により有罪となると、罰金や懲役といった刑罰が科されます。

ここでは、刑事上の責任について解説します。

刑事上の責任とは?

交通事故における刑事上の責任とは、交通事故の加害者が罪に問われることをいいます。
この際、罪の内容によって適用される法律は変わってきます。

刑事上の責任

人身事故の場合は、「自動車運転死傷行為処罰法」の罪に問われることがあります。

また、被害者が死んでしまうかもしれないと思いながら、被害者を引きずったまま逃走した場合などは、「刑法」の罪である殺人罪に問われることもあります。
なお、殺人罪の場合は、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役刑が科されます。

刑事上の責任は、自動車運転死傷行為処罰法や刑法だけでなく、「道路交通法違反」についても問われます。無免許運転や、救護義務違反、飲酒運転等が該当します。

飲酒運転

以下に代表的な事例を掲載します。

ひき逃げ 懲役5年以下か罰金100万円以下
飲酒運転 懲役5年以下か罰金100万円以下
酒気帯び(0.25mg以下) 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒気帯び(0.15~0.25mg) 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

なお、物損事故の場合は、原則として、刑事上の責任に問われることはありません。
ただし、他人の家といった建造物を壊したときは、道路交通法に定めた過失建造物損壊罪(かしつけんぞうぶつそんかいざい)に問われる場合があります。

交通反則通告制度とは?

交通違反のうち比較的軽いものは、反則金を納付すれば、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けないで処理されます。
これを「交通反則通告制度」といいます。

なお、この場合でも反則金を納付せず、通告を受けてもなお未納付の場合には、刑事手続きにより処罰されることになります。

ただし、交通反則通告制度は交通事故には適用されません。

刑罰の種類

刑法上の刑罰には次の4種類があります。

懲役 受刑者を刑務所に収容して、強制労働をさせます。執行猶予が付く場合があります。
禁錮 刑務所には収容されますが、強制労働は課されません。執行猶予が付く場合があります。
罰金 刑罰として、一定額の金銭を国家に納めさせます。一万円以上となります。
科料 刑罰として、一定額の金銭を国家に納めさせますが、こちらは、千円以上一万円未満となります。

なお、執行猶予については、裁判所が1年以上5年以下の範囲で判断します。
執行猶予期間を問題なく過ごせば、刑の言い渡しは効力を失うことになるので、刑務所に入らなくて済みます。

量刑の決め方

自動車事故における裁判での量刑の判断ポイントは、次のようになっています。

・事故結果が重大か?
被害者が死亡した場合が、他と比較して最も結果が重大になります。
・加害者の過失の度合いはどの程度か?
加害者の過失が大きければ、問われる責任も重くなります。
・被害者側に過失があるかどうか?
被害者側にも落ち度があれば、それは考慮されることになります。
・示談が成立しているか否か?
被害者と加害者に示談が成立していれば、被害を弁償しているということで刑が軽くなります。
・加害者が反省しているかどうか?
加害者に反省の様子がみられれば、それは考慮されます。

交通事故における裁判の進め方

交通事故は、他の犯罪に比べて毎日かなりの数が発生しているので、通常の手続とは別に、「略式手続き」で処理されています。

略式手続きは、100万円以下の罰金、または科料の刑となると予想される交通事故事件の時に使われる手続きです。
検察官の請求を受けた簡易裁判所において、書面審理で処理されていきます。

略式手続き

なお、「100万円以下の罰金または科料」以外の刑罰がふさわしいと思われる事件や、内容が複雑な事件の場合は、通常の裁判手続きにより裁かれていくことになります。

交通刑務所とは?

交通事故を起こした場合で、実刑判決を受けたときは、交通事故で有罪判決を受けた受刑者が集められている刑務所に収監されることになります。ここは一般に、「交通刑務所」と呼ばれています。

ここでは、段階を追って、鉄格子や高い塀がない部屋に移ることができるとともに、受刑者の自律性を尊重した開放処遇というやり方が採用されているのが特徴です。