物損事故

交通事故は大きく人身事故と物損事故に分けられます。

ここでは、物損事故における損害賠償請求について説明します。

物損事故とは?

物損事故とは、財産(車など)に対して、何かしら損害が発生した事故をいいます。
交通事故の場合の財産とは、主に車を指します。

物損事故

他人に財産を傷つけられた人は損害賠償を請求することが可能ですし、傷つけた人は損害を賠償する責任を負います。

物損事故の特徴

物損事故は自賠責保険が使えないことが大きな特徴です。
このため、民法にもとづいて損害賠償責任を追及することになります。

民法では、不法行為によって他人に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うこととなっています。そして、加害者に非があるということを、被害者が証明しなければいけません。

損害賠償を請求する相手は、加害車両の運転者とその使用者に限られます。
使用者とは、運転者が仕事で車を運転していた場合、その者の雇い主をいいます。

このように物損事故の場合は、自賠責保険が使えないので、加害者が加入している任意保険か、もしくは加害者本人が賠償することとなります。

また、自賠責保険が使えないこと以外にも、物損事故には慰謝料が認められないという特徴があります。

物損事故における損害賠償の内容

物損事故では、慰謝料が認められる場合はほとんどないため、次に説明する「財産的損害」について請求していくこととなります。

財産的損害には、事故に遭ったことで実際に支出することになった損害(「積極損害」と呼びます)と、事故で車が損害を受けたことにより、仕事を休まざるを得なくなったことによる損害(「消極損害」と呼びます)があります。

物損事故の場合は、消極損害にあたる休業損害はあまり認められることがなく、基本的には積極損害を請求していくこととなります。

積極損害

交通事故の物損事故における積極損害は、次の3つのパターンに分けて考えることができます。

積極損害

・車の修理が可能な場合
・車が全損して修理が不可能な場合
・その他の損害


(パターン1)車の修理が可能な場合
・車両等の修理費
 車の修理が可能な場合は、修理にかかった実費が損害額となります。
ただし、車の年数が経っている場合、修理にかかった費用の方が、車の時価を上回ることがありえます。そういった場合は、時価の方が損害額となります。

・修理期間中の代車費用
 交通事故によって自動車を修理に出すことになった場合、その修理期間中は、代車を利用しなければならないでしょう。
 このような代車費用も損害として認められます。

・車両等の評価損
修理をしても、一度交通事故に遭った車は、中古車市場での評価が下がってしまうものです。この評価損を損害賠償で請求できるかどうかは、裁判例を見ても判断が分かれています。
ただ、一般的な傾向としては、新しい車の方が評価損は認められやすいです。

(パターン2)車が全損して修理が不可能な場合
・買換え費用
交通事故によって車が修理できないほどダメージを受けた場合は、全損ということになります。この場合は、交通事故に遭う直前の車の価値と同じ価値を持つ車に買い替えるための費用が損害額となります。

・買い替えまでの代車費用
 交通事故によって車を買い替えることになった場合、その間は、代車を利用しなければならないでしょう。
 このような代車費用も損害として認められます。

・自動車登録手続関連の費用
車の買い替えに伴う車両の登録手続に関連する費用も、損害として認められることがあります。例えば、新たに買い替えた自動車の自動車取得税などが挙げられます。

(パターン3)その他の損害
車以外を壊した場合も、損害賠償が認められます。
例としては、次のものが挙げられます。

・建物の修理費
・ガードレールや道路上の標識などの修理費
・店舗の商品や車の積み荷に対する弁償

消極損害

物損における消極損害が認められる場合は多くありませんが、例としては以下のものが挙げられます。

・休車損
交通事故により、車が使用できないことになり損害が生じた場合は、それを休車損として損害賠償請求をすることができる場合があります。

休車損は営業用に限られる

もっとも、休車損は、常に認められるわけではありません。
これが認められるのは、車を使うことによって利益を得ている場合に限られますから、おのずと仕事用・営業用の車に限定されることとなります。

また、代車が利用可能であれば、それによって車が使えないという損害を埋め合わせることができるので、休車損が認められるのは、その営業車が特殊なもので、代車が調達できない場合に限られます。