訴訟による解決

示談・調停によっても話し合いがつかない場合は、裁判を起こすしかありません。

ここでは訴訟による解決方法について概略を説明します。

交通事故における訴訟とは?

交通事故の紛争は、ほとんどが示談によって解決しており、裁判までもつれ込むケースは深刻で重大なケースということが言えます。

交通事故における訴訟

例えば、被害者本人が亡くなっているケースや、損害賠償額において、加害者側と被害者側の主張に大きな溝があるケースなどが挙げられます。

また、交通事故による損害と事故との因果関係について、両者の主張に大きな対立があるケースなども裁判までもつれ込むことがあります。

訴訟を選ぶ前に

訴訟は、法律の素人には難しい手続きです。
交通事故の被害者を救済するため、現在では様々な制度が用意されているので、訴訟を起す前に、まずはその活用を検討しましょう。

なかでも自賠責保険は、被害者側の過失については、重大な過失がない限り、過失相殺による保険金の減額をしないことになっています。
裁判になると、過失相殺は厳密に検討されますので、この取り扱いは、被害者にとって有利といえます。

さらに、事故と損害の因果関係が明らかでない場合でも、死亡や後遺障害による損害については50%の減額をしたうえで保険金が支払われることになっています。
これは、被害者側の立証責任が軽くなっているため、被害者にとっては有利です。

その他にも、後遺障害の等級認定について納得がいかない場合は、異議申し立ての制度が用意されています。

これらを検討しても、うまくいかない場合は、訴訟を検討することになります。
訴訟の場合、訴訟費用や弁護士費用といった各種費用が掛かってきます。
これらを勝訴することによりまかなえればいいのですが、そうでない場合もあり得ます。

したがって、まずは裁判を起こした場合の見通しについて、弁護士に相談してから裁判を起こすことをおすすめします。

訴訟前に弁護士に相談

訴訟の流れ

訴訟は以下の流れに沿って進められていきます。

・ 訴状の提出
裁判を起こす場合は、訴えを起こす側(原告といいます)が、相手の住所地の裁判所に訴状を提起します。なお、請求する金額により取り扱う裁判所が異なっています。
140万円を超える請求金額の場合は地方裁判所が、140万円以下の場合は簡易裁判所が取り扱うことになっています。

原告は、訴状に訴えの内容を記載します。なお、訴状には、収入印紙の貼付が必要です。
例えば、100万円の請求金額の訴えを起こす場合は、11,000円分の収入印紙を貼ることになります。

・裁判所による第1回目の期日の指定
訴状を受理した裁判所は、第1回目の裁判の期日を指定してきます。
訴状の提出日から1カ月後くらいの時期になります。

ここでは、原告が訴状の中で訴えた内容について、被告がその反論である答弁書を提出することになります。
なお、被告側が第1回の期日を無視し出頭もしなかった場合は、原告の主張を認めたとみなされることになります。
したがって、原告勝訴の判決が下されることになります。

第1回目の期日の後は、毎月1回程度のペースで裁判が進められていきます。
そこでは、原告と被告双方が、それぞれの主張を書いた書面(準備書面といいます)と証拠を出し合ってそれぞれの言い分を主張することになります。
必要によっては証人尋問なども行われます。

この積み重ねにより、裁判所が心証を形成、つまり、裁判所としての判断を決めていくことになります。

・判決
双方の主張が出尽くしたら、裁判所が判決を下すことになります。
この判決は、強制力を持っていますので、速やかに損害賠償の支払いが行われない場合は強制執行をすることができます。

・訴訟上の和解
判決がでる前に、裁判所から、和解案を提案されることがあります。
これを訴訟上の「和解」といいます。
和解が成立した場合は、それをもって裁判の終了となります。
和解が不成立となった場合は、判決が言い渡されることになります。

訴訟上の和解

少額訴訟とは?

請求額が少額の事件には、速やかに解決を図るために、「少額訴訟」という制度が用意されています。

これは請求額が60万円以下の場合に利用することができ、原則として1回の審理で終了します。また、自分で訴訟を行うことができるのも大きな特徴です。

申し立てる裁判所は、相手の住所地を管轄している簡易裁判所です。
なお、一日で証拠調べから判決まで終わらせるので、証拠書類は事前に提出することになります。また、証人尋問については、電話会議のシステムを用いて証人尋問を受けることができるようになっています。

このように使いやすい制度ですが、判決に不服がある場合でも控訴はできません。

なお、被告が少額訴訟に応じない場合は、通常の民事裁判の手続に移されることになっています。