自動車保険の基礎知識

交通事故の被害者は、加害者に対して、自分が被った被害について損害賠償を請求することができます。

しかし、加害者に支払い能力がなければ、この権利も絵に描いた餅となってしまいます。自動車保険制度は加害者の支払い能力を補い、被害者を保護するための制度です。

ここでは自動車保険の概要について説明します。

自動車保険の基礎知識

自動車保険制度の趣旨

交通事故の被害者は、被った損害を埋め合わせるために、加害者に対して損害賠償を請求することができます。

しかし、請求することができても、加害者に支払い能力がなければ、どうしようもありません。全く賠償を受けられないことになってしまいます。
これをそのままにしておくと、被害者を守ることができません。

そこで、現代の車社会において、どうしても発生してしまう被害者を確実に保護するために考え出された制度が自動車保険というわけです。

これにより、被害者は、損害賠償を請求する権利を絵に描いた餅に終わらせることなく、確実に賠償を受けられることになります。

また、加害者の方も、時として驚くほど高額になることもある賠償金の支払いによって、自らの生活を破たんさせさせることなく、確実に償うことができます。

自動車保険には、自賠責保険任意保険の2種類の保険が用意されています。

自賠責保険

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは?

自動車事故における被害者を保護する目的で作られた法律に「自動車損害賠償保障法」(自賠法)という法律があります。この自賠法によって定められている自動車保険を「自動車損害賠償責任保険」といいます。一般に、「自賠責保険」と呼ばれているものです。

自賠責保険の特徴を3つ説明します。

1. 被害者に対する最低限の補償の確保と強制加入
この保険の目的は、被害者への最低限の補償を確保することです。
そのため、法律によって、車の持ち主は強制的に加入させられます。
したがって「強制保険」と呼ばれることもあります。

この決まりに違反した場合は罰則が用意されていて、保険未加入の車を運転した場合は1年以下の懲役、または50万円以下の罰金という刑罰を科されることになっています。

さらに、車検制度とも連動しており、車検を受ける際は必ず自賠責保険の証明書が必要とされています。車検をしていない車は、公道を走ることができませんので、実質的に、自賠責に入ってない車は公道を走れないことになります。

2. 補償の対象は人身事故のみ
なお、補償の対象は「人身事故」に限られます。
また、自賠責保険による保険金の金額や基準については法令で定められています。
こうすることで、被害者への最低限の補償が確実なものになるように考えられています。

3. 被害者保護の迅速化
被害者の保護を迅速に行うために、被害者自らが保険金の請求を行うことができる「被害者請求制度」「仮渡金制度」「内払金制度」が用意されています。
(詳しくは「保険金の請求方法」を参照)

次は任意保険について説明します。

任意保険とは?

保険会社は、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補うために、自動車保険を用意しています。
先ほど説明した自賠責保険が強制加入なのに対して、この保険はそれぞれが加入するかどうかを任意に決めることができるので「任意保険」と呼ばれています。

任意保険

任意保険の特徴を3つ説明します。

1. 任意保険は自賠責保険の上乗せ保険
自賠責保険は被害者に対して最低限度の補償を保障するための保険で、被害者が実際に被った被害すべてをカバーできるわけではありません

例えば、自賠責保険では、死亡事故であっても3000万円までの賠償となっています。
しかし、これを超える損害賠償が認められることは多々あります。

このように自賠責保険で損害賠償のすべてを償えない場合は、原則として加害者自らの資産によって賠償することになります。そして、保険会社は、この自賠責保険ではカバーしきれない損害を補うための、いわば上乗せの商品として自動車保険を用意しています。

2. 支払い順は任意保険が後
任意保険と自賠責保険は、自賠責保険から賠償金が支払われ、足りない分を任意保険が補う関係になります。つまり、任意保険が自賠責保険を上乗せする形になります。

任意保険で補えない場合、または、任意保険に加入していない場合は、加害者自らが賠償していくことになります。ただ現在では、多くの任意保険では人身事故についての賠償は無制限となっています。

3. 補償の内容はさまざま
任意保険の場合、商品によって補償内容はさまざまです。
対人賠償と呼ばれる人身事故に対する補償だけでなく、自賠責保険ではカバーされていない物損事故に対する補償や、自損事故に対する補償に対応している保険もあります。

ただ、自賠責保険と比較して、保険会社が保険金の支払いを拒否できる条件が多く付いてるので、肝心な時に、保険金に支払いが受けられないということがないよう注意が必要です。